─ 第七十六報 ─

革新市政のツケに苦しむ古都鎌倉〜給食1食895円なり

特別寄稿 鎌倉市市議会議員 伊藤玲子


一、市長が三選できない土地
時は昭和60年10月、中西功市長(当時48歳)が誕生した。この若き市長は、「日本一高い、市役所職員の退職金を引き下げる」を旗印にして選挙を戦って勝ったのだ。このときの相手は、現職市長小島寅雄氏である。
この小島氏は、元小学校の校長から鎌倉市の教育委員長を経て、市長になった人物である。二期目の市長選挙は、共産党を除くすべての党や会派が支持した。何の組織も無い中西氏は、ただの泡沫候補として誰からも相手にされない状況であり、当選の報に、本人さえ信じられずポカーンとしている有様であった。
このときの鎌倉市役所職員の退職金は、国家公務員の約2倍、月給の130ヶ月分であった。 退職する部長は6,000万円以上、学校の給食調理員は校長先生よりも高く3,000万円以上ももらっていた。この原因を作ったのは、昭和48年から2期8年間続いた正木千冬市長時代である。この頃は、東京都知事を始めとして、横浜市長、鎌倉市長、藤沢市長と、当時の社会党と共産党が押した革新首長のベルト地帯が出来た頃であり、丁度高度成長期とあいまって、職員をどんどん採用し、給料をばんばん上げまくっていた。
しかしその後、革新市長の時代も終わり、このときのやりすぎが批判されてきたが、革新知事が24年続いた神奈川県の影響も受けて、鎌倉市では見直しがされないままであった。
これが鎌倉市民の怒りに触れて、小島氏の再選を許さず、日本一高い退職金を下げようとした、若くて無名の中西氏を新しい市長に鎌倉市民は選んだ。ところがこの8年後にまた同じような事が起こった。
今度は、2期8年務めた中西市長が新人の竹内氏に選挙で負けたのだ。竹内氏は、選挙で「市役所職員の税食病」を批判して戦いに勝った。思い起こすと、中西市長時代に、退職金を国家公務員並に引き下げたが、この他の給与関係の改善は何も手をつけなかった。私的機関として「行革懇話会」など作りはしたものの、目に見える改革は何もなく、これで市民は中西氏の3期目を阻止する事になった。
平成13年10月までの2期8年務めた竹内市長は、さすが元新聞記者だけあって、新聞の見出しになるような目立つことを色々やってきた。阪神淡路大震災のときに、被災者を鎌倉市民の家にホームステイの形で受け入れ、更に緑の多い森の開発をストップ、パチンコ店の建設ストップや、競輪事業から撤退などの裁判にもひるまず、また良く知恵も出したと、この点は評価する。
しかし、行革だけは1期目はどうにかやったものの、2期目は、まったくやらなかったという印象が強くある。
鎌倉市長は、歴代を見ていると何か同じような事を繰り返しているように思える。
前の竹内市長も前々の中西市長も、行革に取り組もうとして市民を集めて会議やプランは作るが、実行(改革)が伴っていかない。何の改革も見られず、これと言った効果も見られていない。
そこで今回(平成13年10月)の市長選挙を振り返ってみると、竹内前市長は、9月に入って、支持者や市議会などから、3選への出馬をどうするかの意向を打診さていたが、何ら態度を表明せず、ごく一部の人だけに不思議な手紙を出していた。これは「市民の皆さんへ、市民の市民による市民の為の市長選挙に期待する」というもので、その中で「出たい人より出したい人を皆さんで擁立してください」と述べていた。
ところが、この手紙をもらった人が、「私の立候補を前提にしたかのような動きがあるが『新しい酒は新しい革袋に』」と言う部分を読んで、出馬の意向が無いと、そそっかしく受けとめて、インターネット上に、「市民の手で市長候補者を選びましょう」と流してしまったから、さあ大変。当然竹内市長は自分と思っていただろうに、さにあらず、ここで選ばれたのが、同業の新聞記者の人であった。
2期目務めた竹内前市長は、選挙でたたかう前に、市民の推薦合戦に敗れてしまったわけである。
選挙通の人は「策士が策に溺れた」と言っていたが、私はそうは思わない。市長時代の2期8年間に、真の行政改革が行われなかった事に対して、市民が「NO!」と判断したのである。
何しろ市役所職員は基本計画などと称するプランはよく作る。竹内市長時代にも、緑保全を始めてとして、まちづくりや、環境・観光などなど沢山作ったが、今まで何のアクションも無く、すべてプランだけで終わっている。
鎌倉市民は、2期8年間は市長を信頼して黙って託しているが、3期目の市長選には厳しい判定を下している。自分達の納めた税金が福祉や教育などに使われず、大半が市役所職員の人件費として消えて行くのでは、市民が怒るはずだ。こんな事が、何故歴代の鎌倉市長は解らなかったのだろうか。いや解っていても、職員と言う化け物にのみ込まれていたのに違いない。

二、市税の半分が職員の人件費
鎌倉市役所職員の月額平均給料を、国家公務員と比較すると(表1)となる。これは市役所が発行している広報誌で公表したものである。一般行政職と比べると鎌倉市は平均年齢が5歳高くて、約73,000円高くなっている。また技能労務職(現業職員)は、国に比べて、2歳若いにもかかわらず約72,000円高くなっている。この月額は本給だけであって、この他に調整手当て、扶養手当、住宅手当などが加算されて、実際の月収は50万円以上になっている。
この公表された「職員の平均給料月額」は、我が鎌倉市が神奈川県下で一番高い。恐らく日本一高い給料ではないかと思う。この人件費を退職金を除いて健康保険などの雇用者負担を加えると、職員一人あたり年間1,000万円以上(担当課の計算では950万円)かかっている。これに総職員数17,321人を乗じた額173億円が1年間の人件費であり、年間の市税収入354億円の約半分を占めている。
職員一人あたりの人件費が高くても少数精鋭なら、まだ我慢もできるが、この職員数が、神奈川県下の他市に比べて、ずば抜けて多いときている。(表2)は県下の類似規模の市の人口と職員数である。
これが革新市長時代の職員の増加と給料の優遇を行ってきた産物であり、遺産でもある。これが古都における保護行政なのかと皮肉りたくもなる。
また鎌倉市議会は、職員定数28人のところに、共産党議員が5人も占めている。市役所職員の組合も、二十数年前から共産党支持であり、何かと言うと権利ばかり主張して、赤旗を立てて闘争にあけくれている。

三、厚遇される現業職
鎌倉市の職員給料が県下一高いことは自他ともに認めており、市議会の場においても市長や助役、幹部職員は堂々と、また開き直ったかのごとく認める答弁をしている。
特に、現業職員と言われている、ごみ清掃作業員、学校給食調理員、自動車運転員、庁内や学校の用務員などの給料が国や県或は他市に比べてあきれてしまうほど優遇されている。要するに給与関係の条例や規則の運用の範囲と称して、給料を上げてきたのである。

  1. 技能労務職(現業職)の給料表
    公務員の給料は、職務と責任に応じて別々の給料表で定められている。しかし鎌倉市では、一般行政職と現業職の給料表が同一表(表1)になっている。
    これは25年前の正木革新市長時代に「職種は違っても、月の生活費は同じにかかる。市の職員は皆一緒だ」と言う理由で、別々のものをわざわざ一本化した。
    問題なのはその運用で、いかようにもなってしまうことだ。就職したときは、現業職初任給が低く位置付けられているが、採用から4年すると、一般職から2級職になる時に一般行政職は9,800円昇給するのに、現業職は18,700円も昇給する。また通常だと12ヶ月で昇給するのに、現業職に限って、6〜9ヶ月で昇給させている。こうしていつのまにか、一般職と現業職の給料が同じになっていく仕組みにとなっている。
    これだけでなく、団塊の世代対策として、50歳以上になると、すべての職員を長級まで昇任させて(通称「わたり」と言っている)これでまた給料を月16,000〜17,000円上げている。
    これにはさすがの県も、鎌倉市に対して「給料表を分離して給料を引き下げるように」との指導をし、庁内の部長職で作っている「給与制度研究会」(通称「給研」)の中でも、人事部長自らが「あるべき姿は一般行政職と差をつけて行くことで、中には管理職並の収入がある現業職員もいる」と発言している。また市長も「現業職の平均給与が鎌倉市は大変高いと認識している」と議会で答弁している。

  2. 学校給食調理員の給料
    学校には、どこでも夏を始めとして冬・春の長期休み期間がある。この為鎌倉では、学校給食は年間180日程度しかない。これを言い換えると、給食調理員は180日だけ働けばいいことになる。(通常市職員出勤日数年間約250日)。なのに調理員は1年間分の給料をもらっている。年間一人あたり人件費950万円を180日で割ると、1日当たり約52,700円になり、1日8時間とすると時給がなんと6,600円にもなる。時折、新聞の折込にお弁当屋のパート調理員の募集チラシを見るが、パートの給料は時給750円-850円程度となっている。これと比べると学校調理員の正規職員の給料はとんでもなく桁外れに高い額である。
    私がこのことを平成11年9月議会で指摘したところ教育委員会の職員も慌ててコスト計算したら、学校の給食が1食あたり895円とはじき出された。内訳は材料費が220円、人件費と光熱費が675円である。光熱費は微々たるもので、1食当りの人件費は600円をゆうに超える。これには、いささかあきれたらしく、早速パート嘱託の調理員を採用しだした。この事は大変結構なことであるが、鎌倉市内にある国大付属小学校や県立養護学校では、大分前からパートを導入しているのに、市立の学校は一体今まで何をやっていたんだと言いたくなる。
    ところが市のこの改革に職員組合と一部住民が一緒になって、調理員などのパート導入に対して、給食の水準が下がるからとの理由で署名を集めて反対の陳情を市議会に提出してきた。議会ではこの陳情について、共産党のみ賛成で他は全議員反対で、勿論不採択となった。

  3. 市役所の運転手
    国民の大多数が運転する時代に、市役所の運転手は一般行政職より給料が高い。本市の運転手は大型免許取得が前提になっている。理由は安全性のためだという。鎌倉市役所には大型車は4台しかない。市役所で一番多いのはゴミ収集車である(57台)。
    ゴミ収集車は普通免許で運転できる。隣の逗子市はゴミ収集車の運転手はすべて普通免許で行っている。我が鎌倉市は大型免許資格という条件をつけて、お手盛りで給料を1号7,000円加給している。大型免許取得条件の理由として、安全性の為というが、毎議会の度にゴミ収集車事故の為の損害賠償が何件も出されている。逗子市では普通免許で運転しているが事故が多いと言う事を聞いてことが無い。
    このように何だかんだと理由をつけては、給料を高くしている。一般行政職は各課で管理している軽自動車を市内各所へ運転、飛び回っている。私でさえ毎日運転し、事故などおこしたことも無い。何故市長や議長の専用車、或はゴミ収集車に大型免許が必要なのかまったく理解できない。

  4. ゴミ収集の作業員
    家庭から出る生ゴミの収集は、鎌倉市もステーション方式で行っている。これは各町内会などできめられた場所に、週2日、出しておいてもらい、それを収集していく方式である。
    このゴミの収集に、収集車1台につき運転手一人と作業員二人の計三人が乗務しているが、運転手は車から降りて収集することなく(時たま作業している事も見るが)運転しているだけで、何か無駄を感じてしまう。
    実は、担当の資源再生部で、平成11年8月から12月まで4ヶ月間、現行の三人乗務を二人乗務で作業を試行した経過がある。その結果は「二人乗務は収集区域の見直しとか、作業上のいろいろな課題を検討して上で、出きるだけ早く実施したい」となった。要するに、各市同じように特別危険な場所を除いて、ゴミ収集作業は二人乗務で可能との結論がこのとき得られたはずである。ところが、いまだに3人乗務で作業を行っている。これに対して担当部長は「人員整理できないので、今ある人員の枠の中で、融通の付くところはやった方がいい」と、また人事部長は「仕事を見なおして余剰人員が出た場合には、新しい行政需要に対応するとか、或は、職種を変えて別の仕事をしてもらうと言う事を考えなければならない」と説明しておいて、その後2年も経つのに、まだ何の改善もされていない。本当は組合と交渉するのがいやだから放置しているのではないか。

  5. ボーナスの役職加算
    公務員のボーナス(期末・勤勉手当)には役職者加算の制度があり、20%を限度として役職に応じて加算されている。鎌倉市の職員は(表3)のようになっている。
    私が平成11年9月の議会の場で「職員の給料問題」を始めて取り上げた時に、問題が沢山あるので、今後毎議会毎に追及して行くことを宣言した事があり、この時から市側は、法律違反らしき怪しいものを整理し始めた。こういった流れの中で、県からの指導もあり、12年3月にやっとボーナス支給額(月数)について、組合と交渉できめていたものを、条例で定めるようになった。
    丁度この時に、ボーナスの役職加算の率の見直しも行われた。従来は組合の要求どおり全職員に役職加算を行っていたが、改訂によって、「上記以外」の一律19,000円を廃止、課長以上の管理職の加算率を係長級と同率の10%に引き下げた。従来の一律19,000円加算は、市の条例・規則には何もなく、国や各市にも無い鎌倉独自のもので、組合役員と一部市職員しか知らず、後で分かった事だが市長さえも知らなかったようだ。
    またこれと別に、管理職の加算率を係長級にあわせて、一律10%にする事は、人勧や国・県・各市の制度ともかけ離れているので、私はいろいろ問いただしたが、誰からもこうなった理由を説明してもらえなかった。
    唯一の説明は、人事部長が「役職加算の対象となる職種の全体の加算率を引き上げ、これに要する経費を削減してゆきたい」との議会答弁だけである。
    その後、漏れ聞くところによると、何のことはなく今までの違法性の高い一律19,000円加算を廃止するのに、組合から大分ごねられたので、「下の職員だけでなく、管理職の加算率も下げるから」と言う事で組合の合意が得られたかららしい。なんということだ!、何の哲学も無く、ましてや管理職の役職加算率まで、一般職員の組合と取り決めるとは、あきれるばかりである。

  6. 定年職員の再雇用
    鎌倉には、現業職員だけが、60歳定年退職後に、3ヵ年間、月に18日勤務で退職時の給料の80%を保証するという再雇用制度が平成12年3月まであった。
    なんと退職後に、月18日勤めて、年間7,000,000万円以上の給料で、しかも1年目は月20万円以上の年金が支給されていたと聞く。
    これもまた、竹内前市長は「こんな実態をはじめて聞いた」ととぼけていたが、今でも制度はあるものの給料の額は下げたらしい。しかしこの制度も14年4月からは、年金の受給年齢の引き上げに伴う「再任用制度」がスタートするので、いずれ整理されるだろうと思っている。

  7. 技術職の加給
    市役所職員1,760人(平成12年度)のうち、建築、土木、保母、保健婦、栄養士等などの技術職が441人いる。この技術職の給料を事務職より1号7,000円加給している。他市にない鎌倉だけの制度である。この加給額は年間約53,000,000円である。
    平成12年度に新規採用者にはこの1号加給を廃止したが、在職者の1号加給の廃止を指摘しても、なかなか廃止しようとしない。理由は昭和30年代当時技術職の採用が困難なときに人材確保を図るため、一般行政職より加給したということだが、それから40年あまりもたち、時代に即応した対応をするのが行革ではないのか。こういう事をしているのは県下19市のうち鎌倉市だけである。以前は2号級を加給していたが、さすが1号級にした。やる気があれば出来る筈だ。市長は「できるだけ早く廃止するように努力する」と答弁したが、まだ廃止されない。

  8. 特殊勤務手当
    市職員には特殊勤務手当(特勤手当)というものがある。これは市民からの批判もあって、これまでずいぶん廃止されてきたが、まだまだしぶとく存在するものである。20に区分され60の内容になっている。その内容には、理由の不可解なもののが多く見受けられる。例えば、クリーンセンターや用務員がゴミの収集をすると日額600円ー700円が、給食調理員が給食に従事すると2000円が支払われている。
    年末年始の12月29日から1月3日の間に勤務すると6割増の支給をしているのに、更に日額8000円の特勤手当てが支給されている。この見直しについては、あるプロジェクトで検討している。そのメンバーは、次長職、幹事課として職員課と消防の総務課の職員各2名、公募により応募した職員1名と組合員4名の構成である。組合に提示する案を組合員が作っているわけだ。給与に関する行政側の考え方を検討するのは、給与制度研究会(給研)である。メンバーは人事部長が会長、副会長が総務部長、委員に市長室長や企画部長などの役所の中心メンバーとなっており、この研究会の検討事項に「職員の諸手当についての事項」と、はっきり明記されている。組合に提示する案はこの給研で検討され、それが市長決済をされて改正案として組合側に提示されるようになっているはずである。ところが今年になって給研は一度も開かれていない。人事部長はプロジェクトから上がったものを、給研で審議し組合に提示するというが、開示された組合への決裁書をみると「特勤手当ての見直しについては”プロジェクトの報告”とすり会わせを行い見直し案を提示する」とあった。プロジェクトのメンバーに何の為に職員課の職員が入っているのだろう。組合とのすりあわせではないか。なぜなら組合と交渉する場に人事側は何の考えも案も無く白紙同然で組合交渉を行っているとしか思えないのである。つまり「労使のなれあい」なのである。

四、市長と幹部職員の「うそ」と「矛盾」
現業職の給与表については、やっとのことで平成12年4月から行政職が分離された。しかし中身を見るとまったく変わったところはなく、1円たりとも違わないものであった。
ため、議会の条例審議の際に、更に不合理性を追求すると、市長、助役、人事部長は「まず分離することが第一歩で、次に給料を下げてゆく。組合とも協議して、13年度の実施に向けて取り組んでゆく」と答弁をくり返えした。一方、市民委員だけで構成している「かまくら行財政会議」から平成13年5月に出された「市役所への通信簿」と言うのがあり、この中を見ると、市側から出された「改革の遅れた理由」に(1)給料表を分離した時に差をつけないと言う労使合意がある。(2)近隣市でも一般職と差をつけていない市が多い。(3)給与改定率が低い現状では、現実的に差をつけることが難しい。
と記されていた。ところが調べてみると、裏で組合と、とんでもない労使合意がされていた事がわかった。11年12月に合意した内容は、次の通りである。
  1. 一般職と技能務職(現業職)の仕事は、市職員として、ともに判断と責任がともなうものであり、仕事の重みに差がない。

  2. 職務職階に応じた給料表は差別するためのものである。

  3. 技能労務職の給料水準を近隣と比較した場合、一定の格差があるが、初任給などの比較においても均衡の範囲と考える。

  4. 現在の技能労務職の給与水準は、一般職同様、毎年人事院勧告に基き、生活費などを考慮し、決定されたものであり、妥当性があると考える。

  5. 今後給与任用制度などにおいて、一般職と技能労務職の取り扱いについて差をつける考えはない。

  6. 技能労務職給料表は(分離しても)一般職給料表に対応させる。

この合意は「給料表を分離しても一般職の給料と同じにする」ということではないのか。市長以下役所の職員は、市民や議会に対しては給料を下げるポーズを見せながら、労使間では今まで通り保証すると言っている。
こんなことが発見された以上、憤りを覚えない市民はいないと思う。いるとしたら組合の支持を受けている共産党かその仲間しかいない。
この労使合意の矛盾点を指摘すると、人事異動で交代した担当部長は、議会ですべてを認めた.どこが矛盾しているかと言うと、(1)、に「ともに判断と責任を伴う」とあるが、職員が勤務に服するときの基本的態度(服務)については、このとおり職員は皆同じであるが、給料については、一般職は職務と責任に応じたものであり、国家公務員や各市の給料表も別になっており、試験も別々にやっており、「服務」と「給料」を混同させている。
これに対して部長答弁は、給料表は、仕事における責任と内容に応じて重みが違うと区別されていると答えている。(2)、に「差別」という言葉がいきなり出てくるが、給料表の分離が差別に当るなら、公務員は国家を挙げて差別している事になる。これは職務職階の原則による「区別」であって「差別」ではない.組合から差別と言われ怖じけて何も言えないのか、何事においても「差別」はいけないが、どんな場合でも「区別」はきちんとしておかねばならない.。(3)、の「給与水準は近隣と格差があるが、初任給は均衡の範囲」には大きな問題が二つある。一つは、近隣市と比べて鎌倉がダントツに高いことを労使が認め合っている事。二つは、初任給が他市並で、どうして給料に大きな較差がでてくるのかということである。これは条例や規則に違反するような不明瞭な昇給や昇任があったりするからだ。
これに対して部長答弁は、初任給が同じで、給料に一定の差があるということは、これまで同一の給料表を使っていたことや、昇任制度が他市とちがっていたのでという答弁をしている。(5)、の「今後、差をつけない」とあるが、組合に当分「給料を下げない」と約束しておいて、その後の議会や市民会議において、市長は、「給料表分離は第1で、行財政プランの中にも技能労務職の給与体系を見直すと明記されており、このプランにそって実施していく」と答弁している。
これこそ、市長と幹部職員の組織ぐるみの市民に対する裏切りであり,背信行為である。

五、どこがおかしいのか。
勿論鎌倉市においても,少しは改革が進められていることを認めておきたい。一部であるが,学校給食のコストを引き下げようとしたり、保育園の民活化を図るなど、一生懸命に取り組んでいるところもある。しかし基本となる人件費がこう高くては、たいした効果もあがっていないのが実情である。
鎌倉市がこれまで行革に取り組んできた中で、共通した大きな問題点がある。
一つ目は給与条例である。公務員の場合、給与は条例主義がとられているが、議会で議決される条例の中に、市長の裁量(決裁)できめられるところが沢山ある。この為運用と称して何でも出来るようになっており、革新時代の不条理な高額給与制度がいまだに続けられてきた。
二つ目は、「給与制度研究会」というものがあり、主要ポストの部長十数人でつくられているが、これがまったく機能していないということだ。会議録をみてみると、各々の部長が立派なことを言っているようにも思えるが、すべて言いっぱなしで、結論は何時も職員課案のとおりか或は市長の判断に任せるようになっている。国の役人も市役所の役人も皆同じと思うが、今の人事評価は減点方式が多く、実績など余り評価されないようになっている。だから自分の出世を考えるなら「目立たず、でしゃばらず、嫌われず」であり、これが今まさに「無気力、無責任、無節操」の職員を生み出している。
三つ目は、組合との交渉の仕方にある。使用者側である市当局が、事前に内部意思を確認した提示案を持たないまま、労使交渉に臨んでいるのだ。そして交渉を担当する職員に一定のワクも与えずに全部を一任する形で出席させている。これではなれ合い交渉になってしまうのはあたりまえである。
四つ目は、市長や幹部職員の意気込みである。鎌倉市の現業職員の給料は、県下一、全国一高いことを職員は知りながら、また是正の必要性を感じながら、なかなか進めてこなかった、いや手をつけようとしなかった。これは職員組合も悪いけれど、市長以下いままで関係して来た職員の責任である。

六、おわりに
最近は、住民訴訟が活発になってきており、市がこうむった損害を職員に求償してゆくことが多くなってきている。つい最近、鎌倉市においても土地開発公社の不適切な事務処理によって1000万円以上の損害賠償の和解が成立した。これも職員に求償がされるような事を聞いている。
国においても、職員の不作為による賠償責任が問われて、職員個人が賠償をさせられるようになってきた。職員には御難の時代がきたかもしれないが、目に余る行為や怠慢な行為などで市に損害を与えた場合は、どんどん職員個人に損害賠償を求める訴訟が増加してくることになる。
今回の鎌倉市の高額給与問題も、是正が遅れたことによって、市に対して多大な損害が発生してきている。これまで努力してこなかった幹部職員に対して、損害賠償請求を起こそうとしている住民の動きもあるようだが、職員のほうも覚悟を持って仕事に取り組むことが必要となってきたようだ。
まとめるにあたって、はじめてふれたごとく、鎌倉には市長選挙にまつわる不思議な方程式があるようで、どんなすばらしい市長であっても、またどんな実績を上げても、本当の行政改革が出来なかった市長は、三期やる事を市民が許してくれない。残念ながら今回の市長選においてもその様だった。
最後になるが、私は最近ニ代の市長を担ぎ出したが、残念ながら、役人と言う化け物に飲みこまれて、行政改革を果たし得ず、方程式の中で去ってゆかれた。新しく誕生した石渡徳一市長には、三期目にも再選される様に、どうか鎌倉の行政改革をやり遂げていただきたい。市民とともに応援させて頂く。
これまでいろいろと述べてきたが、これが議会での私の「行革奮闘記」である。これが是正されるまで私は議員を辞めるわけにゆかない。
産経新聞社 平成14年2月1日発行
「正論」2002 2 SEIRONに掲載


伊藤玲子氏
昭和2年(1927)生まれ。山脇高等女学校卒。平成元年、鎌倉市政の肥大化、放漫、なれあいに我慢できず、行政改革を公約に市議選に出馬し、当選する。現在4期目。一貫して行政改革と教育問題に取り組む。

表1 職員の平均給料月額
  鎌  倉  市
平均月額 平均年齢 平均月額 平均年齢
一般行政職 399,457円 45歳 1月 326,106円 39歳 9月
技能労務職 361,409円 45歳10月 289,315円 47歳 9月


表2 人口と職員実数
  人 口 職 員 数
鎌   倉 167,540 1,644
座   間 124,534 869
秦   野 160,742 1,124
小 田 原 200,545 1,533
厚   木 209,737 1,709
大   和 211,012 1,399
茅 ヶ 崎 219,615 1,401
平成11年4月1日現在
表3 ボーナス役職加算率
  12年3月まで 12年4月以降
部  長 20% 10%
次  長 15% 10%
課  長 15% 10%
係  長 10% 10%
4級 1部 6% 6%
4級〜3級12 5% 5%
上記以外 一律19,000円
 
 

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